食徘徊コラム ~ローカルな名店・ジェネラルな名店・超越した名店~

「稲毛屋」の記事を書きながら、考えたこと。

名店には、三種類あるのではないか、と。

三種類とは、すなわち、

1.ローカルな名店

2.ジェネラルな名店

3.超越した名店

の三つ。

まず1。ローカルな名店とは。

読んで字のごとく、おもに所在地の近所の人々に愛され、店側も近所の人たちの舌と胃袋を念頭に、日々がんばっている、というタイプの名店。

たとえば、件の目白のうなぎ屋「稲毛屋」などは、この「ローカルな名店」に該当するんじゃないか。

そして2、ジェネラルな名店とは。

たとえば、目白のパティスリー「エーグル・ドゥース」は、2にあたるんじゃないか。

1と2、最大の違い。

それは、ジャーナリズムやメディアにさらされる頻度。

1は頻度が低い。

2は頻度が高い。

1は「知る人ぞ知る」という存在で充足している飲食店であり、2は客の舌だけでなくマスコミの批評なども常に意識した経営を行う飲食店、と表現してもいい。

とくに、例に挙させてもらった「エーグル・ドゥース」などは、日本全体のフランス菓子のレベルを代表するような店であり、お店としては、本場フランスの食通が食べても違和感のないクオリティを意識している、はずだ。

さらに、そういったショップ・アーティテュード(アロイアロイの造語)が、メディアを通じて僕ら食べ手にもきちんと伝わってきている。

こういう飲食店を、“ジェネラルな名店”、と呼ぼう。

1と2、どちらが優れている、という問題じゃない。

どちらが優れている、という問題じゃないけれど、メディアに流れる情報量の圧倒的な差異は、店の質に必ずフィードバックする。

まず、お客の質。

親の代から親しんできた店で店主とも顔見知りだし味も舌に馴染んでいるから利用する、という客。

一方。

よくネットやテレビなどで見かけ評判もよく流行っていて美味しいらしい、という理由で来店した客。

この二者、発するオーラは、まったく違う。

客が違えば、店のムードも変わり、店自体も変わる。

ところで。

本ブログ「食徘徊馬場目白」が注目しているのは、料理の質だけじゃない。

ハコ(店の雰囲気)と、ヒト(店員とお客)も、楽しみたい。

もちろん、料理が美味しいのは、とても嬉しいけれど、さらに、その店に滞在することで得られる独特の感覚を味わったり、店の人との会話や、他の客との会話や、もしくは誰とも会話がない感じとか、出会いがあったり、なかったり、そんなもろもろの状況下で料理の味はいくらでも変わって感じられ、そんなこんなで満腹になり、良きにつけ悪しきにつけ、すべての出来事からあるトータルな印象を得て店を出る、それらプロセスのすべてを愛でたい、と思っている。

だから、料理と店と客とメディアをめぐる社会学は重要。

メディアは恐ろしい。

たとえば近所に新しくオープンした店が気に入ってフツーに通っていたのに、テレビで紹介された途端、客が殺到し、つねに満席で利用できなくなってしまった、などの、劇的な影響がマスコミによってもたらされるケースはよく耳にする。

さらに、客が殺到しているうちはいいが、ブームが過ぎたら、メディア経由の客も常連客もともにいなくなって、店のやる気もなくなり味が落ち、客はまったく来なくなり、閉店。そんなケースだって、ありうる。

ただ、「名店」と呼べる店は、そうはならない。意思、というものがあるからだと思う。

たとえば、「ウチはローカルな名店として、立派に成り立っている、これ以上宣伝する必要はない。取材一切拒否」とか、「ウチはどこにでも通用するジェネラルな名店を目指す。そのためにはメディアで伝えたいことがあるが、媒体は選ばせてもらう」などなど。店の哲学といってもよい。

名店の経営者や料理人は、料理と、客と、立地と、商売的なことと、そこに自分のありかたをかけあわせて、独自のスタンスを導き出しているんだと思う。

いずれにせよ、すべての飲食店は、上記のようなもろもろについて悩み、格闘し、揉まれる。

そのなかに、それでも何年も名店として君臨し、時を経るごとにさらなる個性を輝かす飲食店がある。

そんな店を、3、「超越した名店」、と呼んでみたい。

メディアをふくめた目と舌に長年研磨され、それでも店の哲学と個性が揺らがない、いい店。

そんな、いい店は、1と2を超え、まさに3なのではないか。

僕、アロイアロイの見立てでは、「傘亭」「ラミティエ」「餃子荘ムロ」などが、超越した名店。

熟練した武道家のように、すごいのに力はぬけており、何気ない空気が漂っているのに、ブレない。

フツーに美味しく、楽しく、なごめる。

いかがだろうか。
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by aroyaroy | 2010-04-14 05:55


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