とん太

座敷に、B&Wがある。

B&Wとは、オーディオマニア垂涎の最高級スピーカーブランド。

BOSE、JBL、タンノイ…と高級スピーカーブランド数あれど、B&Wはかなりこだわりの強い音楽ファンが愛用している、というイメージがある。

とんかつ屋の話だ。

厨房で淡々と肉を揚げる店主。

きっと、彼の趣味なのだろう。

こだわりの強そうな、多少気難しそうな男性、という印象。

長めの髪を束ねて仕事に打ち込むその姿は、アーティストのようでもある。

奥さんと思しき女性も、あまり笑ったりしないタイプの人である。

職人。という言葉が、頭をよぎる。

で、出てくるとんかつは、どうか。

とんかつは、以上のイメージをまったく裏切らない職人の仕事、と言おうか、今まで食べていたとんかつって何だったの、と自分に問うてしまうような、本当に最高の美味なのである!

まず、誰でも一口で、おっ、となる美味しさは、衣にある。

ほんとうに、サックサクだ。

時間が経っても、そのサックサク加減が、さほど減退しない。

最後の一切れまで、かなりサックサクな状態で楽しめる。

そして、肉がふっくらやわらかジューシーで旨みに満ち溢れている。

サックサク、と、ふっくらやわらか。

言葉で表現すると、相反するかのような、このふたつの食感。

このふたつの食感が、見事に寄り添っている。

サックサク、と、ふっくらやわらか、の繋ぎが絶妙、とでも言おうか。

よく、食べているうちに衣が肉から離れてしまうとんかつがあって、非常に残念な思いをすることがあるが、ここのは、離れない。

サクッサクと、ふっくらやわらかが、最後までぴったり寄り添っている。

ここを知るまで、とんかつはロースを愛好していた。

脂身が好きなので、ヒレはあまり食べない。それに、ヒレは少しパサパサしていて、豚肉らしい美味しさがあまり味わえない、と思い込んでいた。

そんなこと、なかった。

ここのヒレは、絶妙。肉のジューシーさとは、これである。

噛んだとき、旨みがジュワっと出てくる感じが、本当にする。

これほどのとんかつに、大味なとんかつソースをべっちゃりかけてしまうのは、忍びないだろう。

そこはさすが、きちんとフォローされており、テーブルとカウンターには、ベトナム天然塩、ごま、醤油、ケチャップ、ソース、からし、などの調味料に加えて、小皿がたくさん用意され、さまざまな食べ方を試せるようになっている。

店も勧めていることであるが、はじめは何もつけず、次は塩だけで食べてみる。などを試みてほしい。

とんかつの皿についてくるレモンと塩、なんて組み合わせも美味しい。

ごまと塩、醤油とからし、などもイケる。

いくつか小皿を並べて、さまざま組み合わせを試しながら食べ進むのが、自分としてはかなり楽しい。

いやー、美味いな。

肉の質や、扱いも良いのだろうけど、やっぱり揚げテクなんじゃないか、と思う。

冬は牡蠣フライがいい。

サックサク+ふっくらやわらか、のテクが牡蠣フライに応用され、これまた素晴らしいことになっている。

ああ、褒めすぎか。

でも、とんかつラバーとして、心底思う。

東京で、もっとも美味しいと思えるとんかつ屋が、家から一番近いとんかつ屋だった、という、この幸せ!

満腹して店を出るとき、職人気質な店主が、いかがでした? という風な素振りで、きっちりこちらに目を合わせながら「ありがとうございます」と言ってくれるのが、なんとなく嬉しいのであった。

新目白通り、山の手線ガードより、少し面影橋寄り。

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by aroyaroy | 2009-08-25 02:31 | 高田馬場


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