エーグル・ドゥース (1) ~ショップアーティテュードにおけるAigre(酸)とDouce(甘)をめぐって~

目白のエーグルドゥースといえば、スイーツ愛好家で知らなければもぐり、といわれるほど、都内屈指のパティスリーである。

店名のエーグル・ドゥースは、

Aigre=酸っぱい

Douce=甘い

で、甘酸っぱい、という意味。

スイーツのスイーツたる甘味と、それをおぎなう果物などの酸。このふたつが融合することで、奥行きある美味が生まれる、というイメージが浮かぶ。

あと、甘酸っぱい、といえば初恋かな(照)。

いやいや。

実は、初恋なんてヤワなイメージではなく、「Douce=甘」+「Aigre=酸」の組み合わせに込められているのは、「柔らかいようでいて、刺を含んだ」というようなニュアンスなんだとか(某サイトの解説文から)。

なるほど。

それは、フレンチパティスリーのお手本のような過不足ないエスプリに満ちた美しいフロアに、パティシエ寺井氏の眼光鋭いまなざしが、キッチンからガラス越しに注がれていたりする瞬間に、多少感じることがある。

厳しそうな人、と感じる。

ほのかな緊張感。

さらに、ショップの女の子たちが、なぜか、ほとんどスマイルしないのも、この店を利用したとき印象に残る特徴のひとつで、うっすらとAigreを感じさせる要因か。

嫌味か、こういう言い方(苦笑)。

いやね、ここに限って本当、そういうの全然気にならないし、お店は相当洒落ていているし、スイーツ最高だし、これでいいと思う。

店内の滞在感も、すごぶる快適で、買って帰っても、サロンで食べても、つねになんのストレスも感じずに楽しめる。

そもそも、目白駅からずいぶん歩く、この場所に、つねにこれだけの客を集めているのだから、お店の基本的な魅力と言うものが、推し量れよう。

余談ですが、ウチは目白駅に行くより、近いですけどね(自慢)。

あと、想像するに、ショップアーティテュードとして、「甘い」や「柔らかい」だけでなく、例えば「刺」や、「厳しさ」、あるいは「毒」とか、「アイロニー」、などを含んでいなければ本物ではない、アンビバレンスのなかにこそ本質が存在する、といった、哲学のようなものが存在するのかもしれない。

フランス人や、フランスという国、もしくはフランスの文化など全般に、そういったセンスを感じることがありませんか。

もちろん、それは肝心の商品が優れていなければ、成立しないのだが。

それに関して、ここは、誰だって、もう文句がないだろう。

今秋味わったトルシュ・オー・マロンも最高。

マロンのクリームが滋味深い。

でも実は、主役のマロンクリーム支えるシャンティクレームの、さらに下にあるメレンゲのサックサク感。このサックサク感が、トルシュ・オー・マロンの命かもしれない。

作り置きしておくと、クリームが劣化するだけでなく、メレンゲがふやけるので、注文してから作るのだと思う。

とても美味しい。

とても美味しいのだけれど。

その日は、どういうわけか。

やっぱり、ささやかなAigreを味わってしまうことに、なるのであった。

その日は、店内のカフェスペースで、エスプレッソとともにトルシュ・オー・マロンをいただいていた。

連れが、うかつなことをした。

スイーツがサーブされたと同時に、デジタルカメラをカバンから取り出したのである。

その瞬間。

まだ撮影の構えもしていないのに、そもそも電源も入れていないのに、カメラを取り出しただけで、「店内撮影禁止ですんで」と、ショップの女の子にサクッとクギをさされてしまったのである。

そう。

ここは店内撮影禁止なのだ。

壁にそうしたサインが貼ってあるし、だいたい、それは前から知っていた。

なので、100%こちらに否がある。

が、そうはいっても、こういうのって、Aigreなものである。

そんな気持ちを紛らわすために、店内撮影禁止問題について、考えを巡らすことにした。

そもそも、飲食店は、なぜ店内撮影を禁止にするのだろうか?

(この項、つづく)

a0130529_1201097.jpg
[PR]
by aroyaroy | 2009-10-19 01:27 | 目白


<< ル・モンサンミシェル Le M... 近江牛 亀屋 ~美味しい肉のた... >>